2010年11月9日火曜日

RFI/RFP

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文・石井 恭子(日立総合計画研究所社会システム・イノベーショングループ 主任研究員)

 近年、行政部門の調達におけるRFI/RFPの重要性が高まっています。RFI/RFPは、それぞれRequest for Information/Request for Proposalのことで、一般的に情報提供依頼書/提案依頼書と訳されています。

 これまで日本では、官民にかかわらず、発注者がIT関連システムやソフトウェアの開発の初期段階から大手ITベンダーに対して「丸投げ」することが一般的でした。特に行政部門における大規模システムの場合は、担当部門が技術動向などを把握しきれないこともあり、大手ITベンダーの開発能力に依存してきました。

 調達時には、技術仕様/設計資料/解説資料などの入札説明書が、「◎×一式」というようにかなりあいまいな記述となっていました。システムの構成が比較的単純で、何をすべきかが明らかだった時代には、こうしたあいまいな記述でもさほど問題はありませんでした。

 しかし、1990年代以降IT関連技術の進歩に伴って、ITの適用される業務が拡大したことにより、システムの構成も複雑になっています。その中で従来のように詳細を規定せずに調達手続きを進めてきたことで、(1)プロジェクトの工程管理が困難になる、(2)システムやソフトウェアの価格が適正かどうか判断できない、(3)プロジェクト終了後の客観的な評価ができない、(4)評価を受けた後で適切な改善を図ることができない、といった問題が深刻となっていました。

 そこで、行政部門ではRFI/RFPに力を入れるようになりつつあります。RFPは、応札するITベンダーに対して当該プロジェクトの背景や目的、既存システムの概要や新システムの構成要件、ベンダーの実施すべき事項などを詳細に記した文書です。過去に類似のプロジェクトがあったり、プロジェクトに必要な技術が明確だったりすれば、RFPは比較的容易に作成できます。

 しかし、多くの場合そうではありません。ITの導入に伴ってこれまでにない抜本的な業務改革を実施しなければならない場合や、目まぐるしく進歩する技術の情報が行政部門にない場合もあります。RFPを作成する上で、技術やマネジメント手法の最新動向といった情報が必要となることも少なくありません。

 そうした情報の提供を依頼するための文書がRFIです。行政部門がRFIを毎回出す必要は必ずしもありませんが、新たなプロジェクトに着手する場合や行政部門にノウハウや知識を蓄積したい場合に効果的であると考えられます。具体的には、当該プロジェクトの背景や目的、既存システムの概要や提供してもらいたい情報(技術およびマネジメント手法)を明記します。

 行政部門がRFI/RFPに力を入れることのメリットは、大きく二点あります。第一点は、プロジェクトの進ちょく管理やコスト管理が可能となる点です。つまり、ITベンダーに求めることが明確になっていれば、いつまでに何をすべきで、それにいくらコストがかかるのかも明確となります。また、IT関連システムやソフトウェアに対する投資や支出の適正化にも結びつくことが期待できます。

 第二点は、技術やマネジメント手法の最新動向を把握することができる点です。これまで行政部門は、ITベンダーに任せていたためにそうした情報を入手できず、それがITベンダーへの依存をさらに強めるという悪循環に陥っていました。RFI/RFPに応じた企業からもたらされる情報によって、この悪循環を断ち切ることが期待できます。

 一方、RFI/RFPに注力するにあたっては、行政部門の調達能力を向上させることが不可欠となります。RFI/RFPを作成しITベンダーを選定するには、行政部門にも相当のノウハウや知識が必要となります。そのために、外部の人材の登用や職員の研修の充実が有効だと考えられます。

 地方自治体においては、IT調達改革の一環でRFI/RFPに力を入れる団体が出ています。例えば、長崎県や神奈川県横須賀市、東京都世田谷区、同千代田区では、IT調達の改革に着手し、ITベンダーに任せていたシステム開発について、RFI/RFPの作成業務の段階から、ITベンダーと協力して実施するようになりました。これにより調達金額の適正化、地元の中小ITベンダーへの発注増などの効果が上がったと言われています。

 政府でも取り組みが緒についたところと言えます。総務省が2006年6月に発表した「平成17年度 電子政府基本調査」によると、19府省のうちRFPの公平性や質確保のために、11府省でCIO補佐官がチェックし、5府省で外部の専門家がチェックしていました。ただし、RFP作成の研修を実施している府省はありませんでした。現状では、政府におけるRFI/RFPの作成業務は、外部の人材に依存していると言えます。今後はさらに外部の人材登用を進めると同時に、職員に対する研修などを通じて、行政部門の調達能力を高めていく必要があるでしょう。


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