2010年11月9日火曜日

システム導入と提案依頼書(RFP)

フォーラム・アイ 『システム導入と提案依頼書(RFP)』
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 2008年4月の新事業年度から始まる日本版SOX法(金融商品取引法の「内部統制報
告制度」)は、その適用開始時間が刻々とせまり、対象となる企業は、文書化作業や情報
システムの見直しなどの対応に追われているものと察せられます。

日本版SOX法の対応について、ERPフォーラムが2007年に調査したデータでは、
ERPパッケージの活用を考えている企業は半数近くもありました。
しかし、そのERP導入の際に障害となる課題も下記のように数多く指摘されました。
1.自社の業務や商習慣に合わない (53.8%)       
2.既存システムとの連携が難しい (43.2%)       
3.導入効果を理解・判断しにくい (35.1%)       
4.社内に対応できるITスタッフが不足 (33.4%)
5.投資対効果が見合わない (31.2%)     
6.ERPパッケージの機能が全般的に不十分 (26.5%)
7.経営層の理解やリーダーシップが不足している (22.0%)
8.パッケージ/SIベンダーのサポート力が不十分 (18.1%)
9.機能が複雑すぎて使いこなせない (17.0%)
10.社内の各部門の協力が得られない (15.0%)
上記ベスト5は、ここ数年間その順位こそ変動しているが課題は変わっていません。

さて、ERPパッケージの導入(活用)については、本来何を目的とし、
どのような効果を期待するものであったかを整理すると、
�ERPパッケージは『全体最適化』を目指しているシステムであり、
�財務管理、販売管理、生産管理、在庫管理といった業務毎のモジュールが揃っていて
�複数の機能が統合データベースで、リアルタイムに連携している。という特性である。

また、企業は、ERPシステム導入によって
・統合及び標準化・情報の可視化・資金管理の向上・受注管理サイクルの改善
・調達コストの削減・在庫の削減・生産性向上・ITコストの削減
・ハードウェア及びソフトウェアのメンテナンス軽減・顧客への応答性の向上
といったような大きなメリットを実現できるものと期待している筈であります。

しかし、なぜ1〜10の様な課題が積み残されているかを考えてみると
・ERP導入の目的、ERPの概念を理解していない。
・ERP導入時、社員の意識を改革し、情報を活用出来る社員の役割の再検討が不十分。
・ビジネスプロセスに着目し、組織横断的な計画をたてた企業全体の最適化が不十分。
  (個々の部門のことしか考えず、企業全体の競争力強化を視野に入れた計画でない)
・業務用件、設計図または詳細な計画の文書化が不十分である
・導入した後の、定期的なリスク管理、バージョン・アップ計画が不十分である 
等が想定できますが、簡潔にまとめると、
『情報システムを導入し効果的に活用するための事前の業務分析、システム適用範囲や
手法の検討及び決定などの事前検討プロセスが不十分のままであること』
により、課題が残る結果となっていると思われます。

従って、この様な問題解決にあたっては、情報システム(ERP導入)導入の企業自身が、
「いかに質の高い『提案依頼書(RFP)【Request For Proposal】(企業の開発意図やニ
ーズを記述するのがRFP)を作成できるか否か」
で、決定的な違いが起こるのではないかと思われます。
   
以上のように考えると、情報システムを導入する企業としては、まず
�情報部門による『提案依頼書(RFP)』作成力を向上させることが大切です。
�ある程度の『提案依頼書(RFP)』作成力がついたとき、
�情報提供依頼書(RFI:Request for Information)を活用し、
 より質の高い『提案依頼書(RFP)』を作ることが可能になります。

情報システム導入の基本である『提案依頼書(RFP)』作成時点で、前記にある様な課題
解決策をも含めての『提案依頼書(RFP)』の作成が出来れば、課題の削減のきっかけが
掴めるのではないかと考える次第です。

                 ERP研究推進フォーラム  高橋 和久


(補足)
まず、『提案依頼書(RFP)』を使用する利点を整理すると、
(1)RFPを使うと、RFPチームはプロジェクトの課題や問題点を、通常の場合よりもずっ
 と詳細に調べる必要がある。 
(2)RFPを使うと、ベンダー、SIerはRFPの要求に対応するだけでなく、それを超え
 るような競争力のあるソリューションを作らざるを得ず、したがって所定の価格で
 付加価値をつけてくれる。
(3)RFPを使うと、あるベンダー、SIerを他のベンダー、SIerより優遇したりせ
 ず、全員を同じルールと要求のもとで公平に競争させることができる。
(4)ベンダー、SIerが同じルールと要求のもとで作業するので、提案されたソリュー
 ション間の違いを理解するのがより簡単になる。
(5)類似しているが異なったソリューションが提案されるので、評価が容易になる。

つぎに、『情報提供依頼書(RFI)』を整理すると、
ユーザ企業がRFPを作成するために、最新情報が必要なときは、RFP発行前に情報提供
依頼書(RFI:Request for Information)をベンダー、SIerに発行し、プロジェクト
の目標に対する疑問、プロジェクトで使用する技術が新しいものかの確認や、いろいろ
なソリューションの可能性を調査し、
�要求が指定している技術が利用できない。
�技術は利用できるが、最初の予想より高くつく。
�ベンダー、SIerがRFIの要求を理解していない。
を明らかにすることができます。

情報提供依頼書(RFI)は、ユーザー企業にとって、依頼に応えるベンダー、SIerから
なにが得られるかを判断する一つの材料になります。
RFIは通常、すべての要求を含み、RFPとまったく同様の構成をとります。
技術的な問題だけでなく、プロジェクト管理、保守、教育・訓練、サポートの要求も記
載することが重要です。
これによってベンダー、SIer候補者は、調達のすべての側面について意見を述べ、
自分たちの観点から見て可能なことと、可能でないことをはっきりさせることができま
す。

(参考資料)
・2007ERP市場の最新動向 ERP研究推進フォーラム
・RFP入門 日経BPソフトプレス

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