2010年11月30日火曜日

Oracle over Amazon EC2 and S3の情報収集

http://www.oracle.com/technology/global/jp/pub/jp/seminar/mensah.html

クラウド環境でオラクル製品を利用する企業が利用できるサービスへと歩み出したオラクルのクラウド戦略

オラクル・コーポレーション
クアッシ・メンサー

「クラウド・コンピューティング」や「ユーティリティ・コンピューティング」という言葉が注目を集めています。オラクルは、Amazon.comの クラウド・コンピューティング環境でオラクル製品を利用できるサービスを提供しています。このサービスでは、サインアップするだけですぐにサーバーリソースを入手し、簡単にセットアップ済みのオラクル製品の環境を利用することができます。
Oracle OpenWorld Tokyoでは、オラクル・コーポレーション(米国)のクアッシ・メンサーがクラウド・コンピューティングのメリットについて解説し、オラクルが新たに提供するクラウド対応のサービスを紹介しました。さらに、クラウド・コンピューティングの普及に向けたオラクルのさまざまな取組みについても触れています。


コスト削減、迅速なサービス展開が可能なクラウド・コンピューティング


 http://www.oracle.com/technology/global/jp/pub/jp/seminar/images/mensah_prof.jpgメンサーはまず、クラウド・コンピューティングの概念を電気にたとえて説明しました。通常の家庭では、家のなかに発電機はなく、発電所から送られてくる電気を使っています。同様に、インターネット上(クラウド)のサーバーを利用し、使った分だけ利用料を支払うのがクラウド・コンピューティングです。その利点としては、サーバーリソースを使用した分だけ課金されるため、コストを削減できること、IT部門との調整をしなくとも迅速に開発者がセルフサービスでプロビジョニングできること、柔軟なスケールアップ、スケールダウンができることが挙げられます。

クラウド・コンピューティングは、現段階ではまだミッションクリティカルなシステムでの利用は少なく、その多くは開発者が実験的なプロジェクトで使っているというのが現状でしょう。しかし、オラクルは、企業がより本格的にクラウド・コンピューティングを活用できる環境の実現を目指しています。そのために、適切な製品とサービスのセットを提供し、標準規格を定めてデータセキュリティなどを実現していく必要があると認識しています。

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わずか数分でOracle Database環境を構築できるAmazon EC2サービス


http://aws.amazon.com/ec2/オラクルの重要なパートナーであるAmazon.comは、「Amazon Web Services(AWS)」というサービスを提供しています。現在、米国と欧州にデータセンターを設置してサービス提供されており、日本からもサービスを利用できます。また、将来的にはデータセンターを日本に設置するという予定もあるようです。

AWSは、高速、簡単、低コストでクラウド上のサーバーやストレージを利用できるサービスです。「Amazon Elastic ComputeCloud(EC2)」という仮想サーバーは、1時間あたり10〜80セントという安価で利用できます。ストレージのレンタルサービスである「Amazon Simple Storage Service(S3)」というサービスもあり、こちらは1GBごとに月額15セント(米国のデータセンターを利用する場合)もしくは18セント(欧州のデータセンター利用の場合)です。さらに、通信に必要な帯域幅コスト(1GB単位)が受信10セント、送信10〜17セントかかります。

Amazon EC2には小規模から超大規模インスタンスまでの5種類のスペックの仮想サーバーが用意され、目的に応じて利用できます。管理者アクセスにはSSHを使用し、ファイアウォールやネットワークポート設定の構成機能など、セキュリティ面も充実しています。利用上の注意点としては、Amazon EC2のストレージは一時的なものであるため、インスタンスを停止すると全データを解放してしまいます。そのため、データベース用のストレージとしては「Amazon ElasticBlock Storage」というオプションを利用します。

 図1 例 Linux仮想サーバーのレンタルの場合(2009年4月時点)
図1 例 Linux仮想サーバーのレンタルの場合(2009年4月時点)

Amazon EC2には、事前設定されたAmazon Machine Image(AMI)と呼ばれる仮想マシンイメージとしてOracle Databaseのほか、「Oracle Enterprise Linux」「Oracle ApplicationExpress(Oracle APEX)」のイメージが提供されています。これらを利用すれば、数分〜数十分でセットアップ済みのオラクル製品を使い始めることができます。オラクルは今後、さらに多くの製品についてAMIを提供する予定です。もちろん、セットアップ済みのAMIを使用しなくても、空のマシンイメージに手動でOSやオラクル製品をインストールし、利用することもできます。ただし、現状ではAmazon EC2がクラスタに対応していないため、「Oracle RealApplication Clusters(Oracle RAC)」は利用できません。

セッションでは、実際にメンサーがAWSにアクセスしてAmazon EC2のインスタンスをレンタルし、リストボックスから必要なAMIを選ぶだけで、わずか数分でセットアップが完了するデモを紹介しました。

Amazon EC2とOracle Databaseの機能を組み合わせることで、新たなシステム環境の可能性が広がります。たとえば、「Oracle Data Guard」を利用して欧州と米国にバックアップサイトを構築すれば、ディザスタリカバリ環境として利用でき、ビジネスの継続性を高められます。また、新しいアプリケーションを本番環境に展開する前のテスト環境としても使えるでしょう。クラウド上にデータを置くのがセキュリティ上心配な場合は、OracleDatabaseのTransparent Data Encryption機能を使えば、ストレージ上のデータを暗号化できます。さらに、ネットワーク上を流れているデータの暗号化や、Virtual Private Database機能によるユーザー単位での閲覧可能なデータの制限など、セキュリティ対策の豊富な機能を活用できます。

AWSやオラクルのクラウド・コンピューティング戦略に関する情報は、Oracle Technology Network(OTN)の「Cloud Computing Center」から入手できます。

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Amazon EC2の活用で"本業"に専念できたハーバード大学医学部


次にメンサーは、「Oracle DatabaseとLinuxのサーバー環境を最短8分で構築できた」というAWSユーザーからの言葉に加え、ハーバード大学医学部のAWS利用事例を紹介しています。同大学では、臨床や医薬品の効果をシミュレーションするシステムの構築にあたり、開発期間が短い、必要なリソースが予測できず予算も限られている、技術および管理上の複雑さをできるだけ抑えたい、といった課題を抱えていました。そこで、オラクルのAmazon EC2ベータプログラムに参加し、Amazon EC2の環境を使って開発することで、アプリケーション全体を4週間で構築することに成功したのです。同大学のPeter Tonellato博士は「オラクルとAWSを組み合わせることで、(そのほかの技術ではなく)シミュレーションの開発に時間とエネルギーを集中させることができた。そのため、研究の成果を迅速に得ることができた」とのコメントを寄せています。

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クラウド上でのアプリケーション開発に対応、Oracle APEX


「オラクルのクラウド・コンピューティング戦略は、まずオラクル製品をクラウド上で使えるようにすることだった。次のステップは、クラウド向けの製品を開発し、クラウド上でサービスを展開すること」と話すメンサーは、Oracle APEXのWebサイトにアクセスしてデモをおこないました。Oracle APEXのWebサイトは、オラクル自身が運営する、クラウド上のデータベース・アプリケーションの開発環境です。特別な開発ツールは必要なく、ブラウザ上のマウスクリックだけでデータベース・アプリケーションを開発できます。Oracle APEXのWebサイトで開発したアプリケーションは、ニーズに応じて、社内サーバーもしくはAmazon EC2などのクラウド環境にセットアップしたOracle APEXへインポートできるので、開発作業はOracle APEXのWebサイトでおこない、運用は社内サーバーでという柔軟な対応も可能です。

図2 apex.oracle.com
図2 apex.oracle.com

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Amazon S3を利用したバックアップでコスト削減


続いてメンサーは、AWSのもう1つのサービスであるAmazon S3とオラクルのソリューションについて紹介しました。Amazon S3は前述のようにファイルの保存サービスで、バックアップ、イメージ、仮想マシンのスナップショットなどの保存に利用できます。オラクルは「Oracle Recovery Manager(Oracle RMAN)」とAmazon S3を連携させる「Oracle Secure Backup CloudModule」を提供しており、これによりデータベースのバックアップをAmazon S3上に保存することができます。クラウド上にバックアップがあれば、物理的なメディアの保管場所を気にすることなく、常時アクセスが可能で緊急時にも迅速にリストアできます。信頼性の高いAmazon S3にバックアップデータを保存できる点も安心です。また、安価なサービスなのでバックアップメディアやサポートのコストなどを抑えることができ、優れた費用対効果が得られます。

 図3 クラウド環境でのオフサイト・バックアップ
図3 クラウド環境でのオフサイト・バックアップ

オラクルとしては、Amazon S3へのOracle Databaseのバックアップの利便性を向上させるため、今後も継続的に開発を進める予定です。たとえば、クラウド環境に保存したバックアップの履歴情報や利用料金の請求金額などを管理できるレポートサイトを作成したり、自動的な定期バックアップの検証とリストアのテスト、増分バックアップとフルバックアップの自動マージ、ファイルシステムのバックアップをサポートしたりを予定しています。

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プライベート・クラウドの構築によりさらなる普及を目指す


オラクルのクラウド・コンピューティング戦略の第3ステップは、企業やベンダーが独自のクラウド環境を迅速に構築できるよう、クラウド・フレームワークを提供することです。インターネット上のクラウドに自社のデータを置きたくない企業も、自社専用のクラウドであれば安心して利用でき、IT部門が社内のニーズに迅速かつ低コストで対応可能となります。

オラクルのサーバー仮想化技術であるOracle VMを中心に、Oracle RAC、Oracle Automatic Storage Management、Oracle Enterprise Manager Grid Controlなどのさまざまなグリッド技術を組み合わせることで、柔軟な制御とセキュリティ、プライバシーを両立させたプライベート・クラウドの構築を可能にします。

また、オラクル製品の製品ダウンロードサイト(Oracle E-Delivery)でも、Amazon EC2におけるAMIと同様の、Siebel CRMやOracle Databaseが事前セットアップ済みの仮想マシンイメージ(VMテンプレート)の出荷を開始しています。これにより、Oracle VM上へ迅速にアプリケーション環境を配置、展開することができます。

このように、オラクルのクラウド・コンピューティング戦略は、Amazon EC2でのオラクル製品の利用に始まり、オラクル自らがホスティングするアプリケーション開発環境(Oracle APEX)、プライベート・クラウド構築のためのフレームワークなど多くの選択肢を提供し、企業がクラウド・コンピューティングの潮流に柔軟に対応するための技術とソリューションを提供することにあります。

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