セールスフォース・ドットコム、クラウドの進展がもたらす"ユーザー主導の時代"
「アプリケーションを"開発する"のか、"利用する"のか。選択肢を柔軟に使い分ける時代がくる」。セールスフォース・ドットコム 宇陀栄次社長の講演をまとめた。
[唐沢正和,ITmedia]
2010年11月11日 14時36分 更新
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クラウドコンピューティングに関する製品・サービスが一堂に集まる日本最大の専門展「第2回クラウドコンピューティングEXPO」が11月10日、幕張メッセで開幕した。同日の基調講演に立ったセールスフォース・ドットコムの宇陀栄次社長は、「ITユーザの近未来 〜ユーザ主導の時代へ〜」をテーマに、ユーザーがITサービスを自由に選択、利用する"ユーザー主導の時代"の到来に向けて、ITサービス企業が果たす役割やITユーザーの課題などを語った。
クラウドコンピューティングへの流れが加速している現状について宇陀氏は、「これまで様々なシステム構築にかかわってきたわたし自身の経験から、すべてのアプリケーションがクラウド環境に移行するとは考えていない。ただ、従来のようにアプリケーションをすべてシステム開発で構築するケースはなくなるだろうと見ている。これからは、アプリケーションを"開発する"のか、"利用する"のかという選択肢を柔軟に使い分けていく時代になる。これがクラウドコンピューティングの本質である」との見方を示す。
「わたしは、セールスフォース・ドットコムの市場での位置付けを、テクノロジー企業というよりも、ITサービス企業であると認識しており、顧客から信頼され続ける企業を第一に考え、ビジネスを拡大してきた。現在では、当社の顧客は8万2400社以上に達し、カスタムアプリは17万以上を数えている。ここで特徴的なのは、経済産業省から受注した大規模案件がある一方で、料亭のような小規模な案件も多くあるという点。そして、規模の大きさにかかわらず、同レベルの機能をもつITサービスを利用している。この事実は、とても重要なことだ」と、宇陀氏は指摘する。
確かに、従来型のシステム開発によるアプリケーションでは、豊富な予算がある大規模企業ほど、高機能のITサービスを利用することができる。しかし、中小企業は予算に見合った機能しか盛り込むことができず、ITサービスのクオリティーには当たり前のように格差が生じていた。これに対して、クラウドコンピューティングの世界では、数人規模の小さな企業でも充実した機能を備えたITサービスを手軽に利用することができ、新しいビジネスの可能性も広がる。クラウドコンピューティングの進展により、ユーザーがITサービスを自由に選択、利用できる"ユーザー主導の時代"が到来するというのだ。
また、宇陀氏は、「IT産業とITサービス産業は、まったく異なるものであると強く感じている。IT産業は、モノ作りをするメーカーとしての役割。一方、ITサービス産業は、メーカーが作ったモノを利用して新しいサービスを提供していく役割を担っていくと考える。そして、当社を含め、今存在している企業の多くは、何らかの形でITサービスを自社のビジネスに組み込んでおり、ほとんどがITサービス産業の枠の中に入っている」と、"ユーザー主導の時代"に向けてITサービス産業の市場規模が大きく広がりつつあると話す。
そして、ITユーザーの視点から、「ITユーザーは、ビジネス拡大のためにクラウドコンピューティングをどう活用すべきかに目がいきがちだが、それよりも、今展開している既存のビジネスモデルの構造をITサービスによってどう変えれば、事業をさらに成長させ、競争力を高め、新しい価値を提供できるのかを考えることが重要だ」と、基調講演に集まった多くの来場者に訴えた。
しかし、既存のビジネスモデルを変えることを大きなリスクととらえ、変化に踏み切れないITユーザーも少なくないのが現状。これに対して宇陀氏は、「変化するよりも、変化しないでいる方がリスクは確実に大きくなるとわたしは思う。とくに近年は、ITユーザーが変わらないままだと、ITサービス側はどんどん進化していき、追いつけなくなってしまう。そのため、これからのITユーザーは、進化していくITサービスに適応し、自分たちがどう変われば新しいビジネスチャンスをつかめるのか、知恵を絞ってほしい」とアドバイスを送った。
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